受賞

o      Computational Management Science 誌(Springer) 2011 Best Paper Prize

    受賞論文は Restricted generalized Nash equilibria and controlled penalty algorithm, Computational Management Science 8 (2011), pp. 201-218 です.このジャーナルでは同じ賞を6年前にも受賞しており,これが2回目です.論文で取り扱っている問題は,前回の論文のテーマの一つでもあった一般化Nash均衡問題です.一般化Nash均衡問題には一般にたくさんの均衡解が存在することが知られており,その中の一つを求めるだけでは問題を解析するのに十分ではないと考えられます.しかし,たくさんの(しばしば無限個の)均衡解をすべて求めて,それらを用いて問題を分析するのもあまり現実的とはいえないかも知れません.そこで,一般化Nash均衡解のなかで何らかの(例えば経済学的な)意味を持つ均衡解を特徴づけ,そのような解を考察することが重要と考え,この論文ではそのような一つの概念として restricted generalized Nash equilibriumを提案し,さらにそのような均衡解を計算するためのアルゴリズムを与えました.最近の私の論文の大半は他の研究者との共著論文ですが,この論文は単著論文です.

o      システム制御情報学会―2006年度学会賞「論文賞」

    受賞論文は「空港施設運用における効率化とセキュリティの最適化」(システム制御情報学会論文誌第18巻,第4号,146155頁,2005)です.この論文は私たちの研究室で社会人学生として博士号を取得された三菱重工の熊野信太郎さん,同じく三菱重工の溝口正信さん(現在,大同工業大学教授),私たちの研究室で助教授をされていた滝根哲哉先生(現在,大阪大学教授)と私の4名の共著論文です.空港のセキュリティ対策において特に重要な手荷物検査をテーマに選び,数理計画や待ち行列といったオペレーションズ・リサーチの手法を使って問題を解決しようとしたものです.この研究を始めるにあたっては,実際に関西国際空港に見学に行き,普段は見ることが出来ないような所を見せてもらったりして,モデル化の参考にしました.最適化の応用研究として,なかなか面白い成果が得られたと思っていましたので,この思いがけない受賞は大変うれしく,また良い想い出になりました(写真20065月システム制御情報学会・京都テルサにて).

o      Computational Management Science 誌(Springer) 2005 Best Paper Award

    受賞論文は Quasi-variational inequalities, generalized Nash equilibria, and multi-leader-follower games, Computational Management Science 2 (2005), pp. 21-56 です.この論文は長年の友人である Jong-Shi Pang さん(Rensselaer Polytechnic Institute, USA) との共著論文です.Pang さんは Dantzig Prize Lanchester Prize などの権威ある賞を受賞している最適化理論の著名な研究者です.彼とは日本学術振興会と米国 National Science Foundation の日米科学協力事業として共同研究を実施するなど,これまで十数年にわたって一緒に仕事をしてきました.今回の受賞対象論文は Stackelberg Game という先手後手のあるゲームを拡張したて,先手プレイヤーが複数存在し,それらのプレイヤーが非協力 (Nash) Game を行うという問題(マルチ・リーダー・フォロワー・ゲーム)と,各プレイヤーの戦略集合に依存関係が存在するNash均衡問題(一般化 Nash 均衡問題)を取り扱っており,その問題を準変分不等式として定式化して解くことを提案したものです.この研究成果は,この分野における今後の研究の一つの出発点と位置付けられるものになればと期待しています.


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<Last update: October 29, 2012>