カブロボとは,トレードサイエンス社が運営するカブロボコンテストにおいて,株の取引を行うロボットのことです.ロボットといいましても,物理的な実態があるものではなく,人間が与えたルール(アルゴリズム)に従って,株の売買の注文を出すプログラムのことです.この注文に対して,現実的なシミュレーションを毎日実施し,結果を報告してくれるのが,カブロボコンテストです.
私も趣味と実益(にはなっていないのですが)を兼ね,カブロボをJAVAで作成しています.といっても,ここ2年ばかり改良作業をしていないので,現実の状況(アルゴリズム取引の隆盛,一部の企業の盛衰)に即しておらず,運用成績は右肩下がりのようです.興味がありましたら,下記URLで運用成績がご覧いただけます.
http://www.kaburobo.jp/personal/index/13409/
作成したカブロボの1体が,最終コンテスト(2011年1月〜2012年10月)における成績上位賞収益額部門で1位となりました.詳しくは下記URLをご覧ください.
http://kaburobo.net/2013/01/20111201210.html
このコンテストの期間は,株価が下がっていたため,空売りだけを行うカブロボ「最適化数理(売りだけ)」の成績がよかったようです.実際には空売り(short)と買い(long)をバランスの良く行うロボットのほうが望ましいのですが,それでは収益額や収益率を競うコンテストに勝つことができません.コンテストに勝つために,あえて「空売り」だけを行ったことが功を奏したようです.なお,残念ながら上記の理由から,今後の成績は悪くなるものと思います,
ところで,「カブロボの開発」が学術研究や教育になるのかというと,私の個人的な意見では,学術研究にはならないと思います.学術研究は,論文として公開しなければ,成果として認められません.しかし,論文が公開され,そのカブロボ(アルゴリズム)が活用されると,市場インパクト(多くの人が買うことによって株価があがる)が大きくなり,儲からなくなります.そうなると,論文どおりの実績が出ず,論文の価値が下がります.つまり,認められれば,価値が下がるため,恒久的に評価される研究実績にはなりません.なお,これは「儲ける」という立場での話であり,「損しない」という立場の研究(リスクの評価や制御)には,そのような「いたちごっこ」はないのではないかと考えています.
一方,教育の観点からみると,カブロボのシステムは大変優れていると思います.情報技術(JAVA)や金融リテラシを同時学ぶことができます.また,毎日報告されるシミュレーション結果を分析することによって,経済の現状を知ることができます.そのような講義+演習科目が設計できたらいいなと思っています.
最後に,私たちの研究室に配属を希望される学生さんへのメッセージですが,上記のような理由で,「儲けるためのカブロボ開発」は研究テーマにならないと考えてください.もちろん,新しいポートフォリオ最適化やリスク評価の数理モデルをシミュレーションする上で,カブロボを活用することはよいことだ思います.また,趣味やサークル活動として,(勉強,研究に差しさわりのない範囲で)研究室の仲間内で「儲けるためのカブロボ」を開発することは何の問題もありません.
< Last update: January, 2013>